どんな料理にもスッと寄り添う

私のライフスタイルデザイナーの仕事の一つは、季節やテーマに基づく食空間演出・テーブルコーディネートです。演出に合わせて料理の提案をすることも多いのですが、魅力的な食空間と美味しい料理を引き立てる工夫として、相性の良い酒を組み合わせるのも重要です。

 

近年、日本酒も大いに注目され各地の蔵が魅力的な酒を発信しているので、私の好みの酒も増えるばかりですが、今日はその中のお気に入りの一本をご紹介します。

 

すっきりとクセがなく、旨味とキレのバランス良く、どんな料理にもスッと寄り添ってくれるその酒は、福島県は会津若松の高橋庄作酒造店の「会津娘 特別純米 無為信」という一本です。

 

地元で高橋氏自らの手で作る無農薬、無化学肥料の酒米・五百万米を会津の水で醸した、まさに本格の純米酒です。その土地で産み出したものを、その土地の製法でつくる“土産土法”の信念のもとに酒を造っているのです。

 

「無為信」は、すっきりさらりとした澄み切った味。何色にも染まる純白の衣のような清らかさの中にほのかな酸味が感じられ、静かに存在感のある味。

 

私は会津若松の酒ということしか知らず初めて口にしたとき、衝撃を受けました!舌、喉、体にスムーズに染みわたる優しさと清らかさ。造り手の真っ直ぐで温かい気持ちまでも伝わってくるようです。何杯飲んでも飽きず、次の日にも残りません。

 

どんな料理にも沿いますが、神戸っ子の私はやはり地元の食材と組み合わせます。例えば、塩コショウだけでソテーしてワサビを添えた神戸ビーフ、瀬戸内の魚の刺身や鳴門ワカメの酢の物、薄味でさっと煮た蕗や蕨や筍、野菜の炊き合わせなどです。

 

素材を生かした和食や飾らない家庭料理に一番合うと思いますが、もちろん会津の郷土料理とならドンピシャの理想的な組み合わせでしょう。

 

少し冷やして味わうと、これからの季節にはぴったりです。

澄んだ味わいの会津若松の純米酒“土産土法”の一献
澄んだ味わいの会津若松の純米酒“土産土法”の一献

例えばこんな料理とも……、モズク酢 鯵の昆布〆生姜(上写真)&茗荷風味絹ごし豆腐の味噌付け(下写真)。

 

すべて手作り、量より質を追求する酒のため数に限りがあるのですが、日本酒好きの方なら一度味わってみて下さい。造り手の情熱に裏付けられた素朴で純粋な味わいに好感が持てる、飽きのこない良き一献です。

 

最後に無為信の意味をお話しましょう。無為信とは、鎌倉時代の奥羽河沼郡(福島県)出身の浄土真宗の僧の名前です。親鸞の直弟子の一人で、当時会津には彼の建てた無為信寺がありました。現在その寺新潟県阿賀野市に再興されています。その僧の名に因み銘にしたのがこの酒です。まさに福島会津を愛す土産土法の酒なのです。