今年の筍のシーズンに、木の芽(山椒の葉)の値段が高いので、園芸店から小さな鉢植えを購入して筍ごはんから筍の煮物まで、木の芽を摘んで使っていました。摘んでもすぐ伸びてくるので重宝しましたが、残念ながら途中で枯らしてしましました。木の芽独特の苦辛くピリッとした味は、日本では古代からあるものなのです。木の芽とは、山椒の葉の部分で、日本列島と朝鮮半島南部を原産とする落葉性の低木で、縄文時代から使われています。

 

山椒の実は粉山椒して鰻を食べる時に使われるのが有名ですが、実山椒は旬の時はそのまま、牛肉鍋に大量に加えて食べます。食べ終わっても1時間くらい口の中が痺れるくらい凄くスパイシーなのです。山椒は、漢方の世界では、鎮痛、殺虫、解毒、嘔吐、腹痛、下痢、消化不良などにも用いられているのです。古代人も山椒の効能を知っていたのです。山椒の皮に含まれているシトローネなどの精油分には、胃腸の調子が悪く胃がもたれたり、つかえたりしている感じの時に効果があるのです。山椒はみかんの仲間で、みかんの皮を干したものを陳皮といいますが、これも、山椒と同じように消化を助け、胃のもたれを癒してくれます。“七味唐辛子”の中には、この陳皮と山椒も入っているのです。山椒を会わせて炊き上げるものに佃煮があります。

 

その中でも「ちりめん山椒」は、特別に好きな佃煮なのです。京都に出かけるとお土産で色々と購入しますが、一番多いのが佃煮と漬け物なのです。漬け物はいつか書きたいと思いますが、京都の佃煮の代表が「ちりめん山椒」なのです。

 

「ちりめんじゃこ」の「ちりめん」の由来は、ちりめんの原材料のイワシの幼魚を広げて干した様子が、絹織物の一種で微細なしわのある丹後縮緬(ちりめん)に見えることから付けられてという説で、「じゃこ」はザコ(雑魚)の転じたものです。丹後縮緬が先で「ちりめんじゃこ」自体はそんなに昔からある佃煮ではないのですが、今は、方々で色々な作り方で販売していますね。

いくらでもごはんが進む!京都・ぎをん「浜作」のちりめん山椒とイワシの印籠煮
いくらでもごはんが進む!京都・ぎをん「浜作」のちりめん山椒とイワシの印籠煮

さて、前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは、京都の老舗料亭「浜作」の「ちりめん山椒・ぎをん時雨」と「印籠煮」です。「ちりめん山椒・ぎをん時雨」は、ちりめんと洛北鞍馬の山椒を炊き上げたものです。味はふっくらして、炊きたてのご飯に混ぜ込んで食べるのですが、いくらでもご飯のお替わりがしたくなります。また、おにぎりにしても美味しいのです。これは、通年販売しています。

いくらでもごはんが進む!京都・ぎをん「浜作」のちりめん山椒とイワシの印籠煮

もう、ひとつは「印籠煮(いんろうに)」で、通常は5月から9月末までの販売です。(が、今期の販売は売り切れで終了しました)イワシと生姜を千鳥酢でじっくりと炊き上げているのですが、非常にカチカチになるまで水分を抜いているのです。旅行中の印籠のように、どこへでも携行出来る事から、作家の谷崎潤一郎が命名したそうです。ひとくちでもご飯が一膳食べられるほど、旨味が凝縮しているのです。お茶漬けにしても、一片をご飯にのせて茶や湯をそそぐだけで、上質の汁になるのです。味が濃い分日持ちがして、お弁当のおかずにも大変重宝しています。

いくらでもごはんが進む!京都・ぎをん「浜作」のちりめん山椒とイワシの印籠煮

「浜作」のご主人の森川裕之さんには、雑誌の連載をしていた時に、「かやくご飯」というテーマで取材したことがあります。その時に驚いたのは、通常米を研いだら、しばらく浸水させるのですが、森川さんは、米は研いたらすぐ乾燥させると、10分で炊き上がるというのです。さらに、最初の沸騰と、最後の蒸らし以外は、途中で蓋の開け閉めをしても良いのだと。昔は古米が多く乾燥してものが流通することが多かったが、現在は十分、水分を含んでいる米が多いので、浸水させすぎるとご飯が美味しくならない。そんなことを思い出しながら、土鍋でご飯を炊き、「ちりめん山椒・ぎをん時雨」と「印籠煮」でご飯をいただくと、しみじみ日本って良いなと思うのです。